コレクション 町田市立国際版画美術館

百人一首姥かゑとき 参議篁

百人一首姥がゑとき 参議篁

葛飾北斎
かつしか ほくさい
1760(宝暦10)~1849(嘉永2)

百人一首姥かゑとき 参議篁
ひゃくにんいっしゅうばがえとき さんぎのたかむら

1835、36(天保6、7)年頃
木版(多色) 261 x 378 mm

説明

北斎は富士山を描いた『冨嶽三十六景』(ふがくさんじゅうろっけい)シリーズで有名な浮世絵師です。『百人一首姥かゑとき』は百人一首の和歌の意味を絵で説明したもので、絵具を何回も重ねて色とりどりの風景を描いています。この作品は小野篁(おのの たかむら、参議篁[さんぎのたかむら]とも呼ばれる)という人の和歌が題材で、アワビを取っている女性の姿がおもしろく表現されています。

北斎は浮世絵師の代表的存在で、富士山を描いた連作の『冨嶽三十六景』(ふがくさんじゅうろっけい)はあまりにも有名です。『百人一首姥かゑとき』とは、「百人一首の和歌の内容を乳母(うば)が子供に絵で説明する」という意味で、和歌に詠まれた情景が、あるときは歌人たちと同時代の風俗として描かれ、またあるときは江戸時代の風俗に見立てられています。100枚組として企画されましたが、実際に完成したのは27枚でした。当館ではその全点を収蔵しています。これは世界でも例を見ません。「参議篁」は、平安時代に小野篁(おのの たかむら)が詠んだ「わたの原 八十島(やそしま)かけて 漕ぎ出でぬと 人には告げよ 海人(あま)の釣舟」が題材です。「海人」は男性の漁師をさす言葉ですが、北斎はこれを女性の海女(あま)として描いています。アワビを取る海女たちの姿が、波の間で見え隠れするさまは強く印章に残ります。

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