コレクション 町田市立国際版画美術館

三人舞(愛の踊り)

三人舞(愛の踊り)

谷中安規
たになか やすのり
1897(明治30)~1946(昭和21)

三人舞(愛の踊り)

1933(昭和8)年頃
木版 167 x 237 mm

説明

谷中安規は奇行の持ち主として知られた版画家でした。放浪、居候、お風呂に入らない、稼いだお金はコーヒーや映画に全部使ってしまう・・・などの話が伝えられています。この版画に表された裸ダンスもそのひとつでした。

谷中はダンスの演じ手でもありました。友人の妹に失恋して、お寺の本堂で毎夜踊り狂ったという自身の回想(「画人としての半生」『版芸術』8号)や、永瀬義郎のアトリエで天才的なダンスを踊ったという証言(永瀬著『放浪貴族』)、舞踊家の印牧季雄(かねまきすえお)と永瀬に勧められて、朝日講堂で打楽器の伴奏にあわせて黒衣をまとって踊ったという伝説(料治熊太編『鬼才の画人 谷中安規』)などが伝えられています。この作品はそうした肉体を介して表現することにこだわる、谷中の舞踊家としての一面を伝える木版画です。ダンスという新興の芸術をテーマに取り上げながら、密教的世界観や朝鮮の民画的イメージなど、少年時代に染み込んだ土俗的イメージを重ね合わせた、モダンと土着がミックスされた作品です。

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