コレクション 町田市立国際版画美術館

『愛』より 物腰は優しく清らかな

『愛』より 物腰は優しく清らかな

モーリス・ドニ
1870~1943

『愛』より 物腰は優しく清らかな

1899年刊
リトグラフ(多色) 530 x 410 mm

説明

フランスの画家ドニの版画集『愛』は、1893年に結婚した妻マルトへの愛を主題にしています。各作品のタイトルは、彼女への思いを綴った日記に記された言葉です。「恋していると、自分がいっそう美しくなっているように思える。物腰は優しく清らかに。人生は大切で慎み深いものとなる」(1891年9月3日の日記)。

ドニはフランス象徴主義の画家。理論家としても知られ、「絵画とは…まず何よりも、あるひとつの秩序にしたがって集められた色彩によって覆われた平面である」という彼の言葉は、その後の近代絵画の展開に大きな影響を与えました。自らの結婚を契機に制作された『愛』はごく私的な性格をもつ作品ですが、計算された色面の配置と線のアラベスクが生み出す装飾的な効果ゆえに、優れた美術表現となっています。パステルによる原画の淡く微妙な色彩がみごとに再現され、あふれるような幸福感に輝く甘美な版画集となっています。

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