~まちだゆかりの作家~ 松本旻
オリンピック・パラリンピック文化プログラムに向けて
展覧会概要
2020年東京オリンピック・パラリンピック文化プログラムに向けて、当館では町田市ゆかりの美術家を紹介する展覧会シリーズを実施します。第一弾として取り上げるのは松本旻(まつもとあきら・1936年~)です。大阪府出身の松本ですが1970年から98年まで町田市で暮らしており、その期間は松本が版表現の特質を生かすことや、作者の手の痕跡を消すという自身の表現スタイルを確立した時期と重なります。
10代から浮世絵の摺師として働くなかで版画への関心を深めた松本は、木版による抽象作品の制作を経てポップ・アートに触れ、独自の表現の追及に没頭します。70年代には従来の風景画から脱して現代人にとっての新たな風景像を探求した作品により、国際的な評価を得ます。写真に撮られた風景から印刷物の基本要素である網点を抽出することで、画面を色点の配置に還元し対象の意味性を無化する《風景から-4(I.J.K.M)》は1975年に第11回リュブリアナ国際版画ビエンナーレ賞でグランプリを受賞しました。今回展示する《風景から 4》シリーズ(1974年)はその関連作品です。
70年代後半からは色点による作品がさらに純化され、自らに課した制約のもとに画面を色点のみで埋め尽くす作品群を発表します。その集大成のひとつが、今回展示する大作の5枚組み木版作品《転回w-13》シリーズ(1994年)です。一見無表情な点の集合のように見えますが、そのひとつひとつが手彫りで、正方形の版を90度ずつ回転させながら4色刷り重ねるという膨大な作業のもとに制作されています。松本があえて苦行のような手仕事を経て自らの痕跡を消すことを志向したことを知り作品に向き合うと、作家がこだわり続けた「表現」とはなにか、見るものに問いかけるかのようです。
そのほか当館で発行した版画集『版とことばと-Ⅲ 樹景』(1993年)を含め、初期から近年までの作品約30点を展示し、町田市に暮し、版による表現を追求し続けた作家の軌跡をたどります。
展覧会情報
会期 | 2016年9月24日(土)~12月25日(日) |
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観覧料 | 無料 |