内海柳子とデモクラートの作家たち
展覧会内容
内海柳子(うつみ・りゅうこ)は銅版画の表現を追求しつづける作家です。内海がこの技法に取り組みはじめた1950年代初頭は、日本で銅版画が芸術表現として花開きつつあった時期で、常に進取の精神をもって制作に取り組んできました。
内海は1921年に大阪市堂島で生まれ、1941年に関西女子美術学校洋画科を卒業し、油彩画を発表していきます。終戦後の1946年には開設まもない大阪市立美術館・美術研究所に入所。1954年頃にデモクラート美術家協会のメンバーだった泉茂(1922-1995)のアトリエを訪問したことをきっかけに銅版画に関心を持ち、1955年から同会に参加します。会のメンバーの大半は男性であったものの、民主的な運営を目指し若者が集まったデモクラートには、内海をはじめ複数の女性が加わっていました。泉から学んだ銅版画表現、そして会員同士で芸術論や作品批評を交わし合ったことは、創作の道を支える生涯の糧となりました。デモクラートが解散した1957年に初めての個展を開き、モノクロの象徴的なイメージを追求していきます。
1971年、50代にさしかかった時期に内海はフランスへ渡ります。版画家のウィリアム・ヘイター(1901~1988)が主宰するパリの版画工房「アトリエ17」で一版多色刷り技法を学んだことで、色彩豊かな作品世界が花開いていきました。1977年には自身の銅版画工房「版画80」を堺市に開設。多くの教え子を育て、銅版画の普及にも貢献しました。1991年には長野県に移り制作を続け、同じく芸術家である娘や孫との展覧会を度々開催。100歳を超えた現在は美術鑑賞を楽しむ日々を過ごしています。
本展では当館収蔵品から1950年代から90年代にわたる内海の作品約25点を展示します。さらに、デモクラート美術家協会で活躍した作家のうち関西を拠点とした泉茂、吉原英雄(1931-2007)、また同会の中心的存在だった瑛九(1911-1960)の作品も紹介いたします。
展覧会情報
会期 | 2022年9月28日(水)~12月18日(日) |
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休館日 | 月曜日 ※ただし10月10日(月祝)は開館。翌11日(火)は休館。 |
入場料 | 無料 |
主な出品作品
内海柳子《蝶と木片》1957年、エッチング、180×234㎜、当館蔵
内海柳子《トルソー》1980年、フォトグラビュール、540×420㎜、当館蔵
内海柳子《不安な森》1990年、エッチング、368×614㎜、当館蔵