摺物
展覧会概要
摺物は、注文によって作られた非売品の版画のことをいいます。販売用の浮世絵版画とは異なり、趣味人たちが私的に楽しむために制作し、仲間内で配ったり交換したりしました。
江戸時代に多く作られたのは、俳諧師や狂歌師らが新作の発句や狂歌に絵を添えて木版画にした、「俳諧摺物」や「狂歌摺物」です。また、当時の暦(現在とは違う太陰太陽暦)に基づく「大の月」(30日の月)と「小の月」(29日)を文字や絵で表した摺物、「大小」も流行しました。主に新年に合わせて作られたので、今の年賀状やカレンダーにも似ているでしょう。ほかにも歌舞伎役者の追善や襲名を目的としたものや、歌舞音曲のお披露目の案内、お店の宣伝を兼ねたものなど、様々な用途で作られました。その多くには、縁起のよい動植物や静物、人物が、当時の人気絵師たちによって描かれており、一般に流通した浮世絵版画に劣らない味わいがあります。
また摺物は私的な出版物であったため、採算を度外視した、当時最高水準の摺りの技術が施されたものが少なくありません。「空摺り」や「きめ出し」、「金銀摺り」や「雲母摺り」など、細部には贅を尽くした趣向が込められています。
このミニ企画展では、町田市立国際版画美術館所蔵の摺物80点を、前後期の展示替えでご紹介します。当時の高い摺りの技術と、趣味人たちによる知的な遊び心、そしておめでたい吉祥図像のあふれる摺物の世界をご堪能ください。
展覧会情報
会期 | 2016年6月29日(水)~9月22日(木・祝)
※会期中展示替えがあります。 前期:2016年6月29日(水)~8月7日(日) 後期:2016年8月9日(火)~9月22日(木・祝) |
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観覧料 | 無料 |
- 出品作品リスト PDF[315KB]
歌川豊国「五側役者摺物 五代目瀬川菊之丞」文化13年(1816)頃
(後期展示)
歌川広重「初荷の筆車」文政4年(1821)
(前期展示)
菊川英山 「金太郎の豆蒔き」 文政初期(1818~20)
(後期展示)