ヨルク・シュマイサー
終わりなき旅

企画展

「故宮への入口・北京」 1981年 個人蔵

展覧会概要

ヨルク・シュマイサー(1942-2012)は世界を舞台に活躍したアーティストです。ドイツに生まれ、日本に学び、オーストラリアを拠点に制作を行いました。「旅する版画家」と称されるように世界各地を訪ね、その経験を版に刻みました。その足跡は欧米、中東、アジア、そしてついには南極にまで及んでいます。


「モーソン基地」 2003年 個人蔵

けれども、シュマイサーはただ旅先の風景を描いた画家ではありません。
大胆な造形に目を奪われるオーストラリアの岩山
漂流し崩壊しダイナミックに姿をかえる南極の氷山
季節がめぐるたびに芽吹く新芽
アトリエ前の海岸に流れ着いた貝殻
イメージの趣くまま姿を変えていく女性たち。

マクロからミクロまで、シュマイサーが描くすべての底流をなしていたテーマが「変化」です。
自分をとりまく世界に起こる変化を画面に捉えることに、シュマイサーは生涯をかけたのです。
日本とも深い縁のあったシュマイサー。2012年の逝去後、初の本格的な回顧展となる本展では、初期から晩年までの代表作を網羅した約180点により、その軌跡をたどります。


 「日記とエアーズ・ロック」 1979年 個人蔵

展覧会のみどころ

1. 日本から南極まで、壮大なスケールで世界をめぐる旅の数々
2. 逝去後初の本格的回顧展
3. 世界を舞台に活躍した銅版画家の50年におよぶ制作の全貌を紹介

展覧会の構成

シュマイサーの生涯にわたる主題、それが「変化」です。
旅の風景、変容する人物を描く連作、流麗な文字が躍る日記シリーズ―さまざまな作品すべてが この主題に連なり、ひとつの大きな流れとなってシュマイサーの芸術をつらぬいています。
本展では「変化」をキーワードに、初期から晩年までの展開を5つの視点から見て行きます。

I. 変化へのまなざし / Beginnings: Seeds of Change

シュマイサーは1962年にハンブルク造形大学に入学し、パウル・ヴンダーリッヒのもとで版画を学びました。「変化」への強い関心は、この頃の作品にもすでに見て取ることができます。ひとりの女性が年令とともに変わっていく姿を描く連作『彼女は老いていく』など初期の代表作に「変化」の萌芽を見ていきます。


『彼女は老いていく』 1967-1968年 個人蔵

II. 旅 / Journeys: Changes of Perspective

「旅の画家」と呼ばれるシュマイサー。彼にとって旅とは空間を移動することであり、その場所に積み重なった時間を遡ることであり、その地の風景やできごと、出会った人々によって自分の中にわきあがったものを体験することでした。それは perspective が意味する「経験に影響されるものの見方」の変化ともいえるでしょう。日本、オーストラリア、ラダックはじめ、世界各地を訪ね制作された作品を通じて、彼の「旅」を追体験します。


『京都清水寺』 1979-1980年 個人蔵



「日記とピルバラ」 1980年 個人蔵



「ティクセ」 1985年 個人蔵

III. 日記と「小さなもの」 / Diaries: The Record of Change

画面に流麗な文字でテキストを書き込んだ「日記」のシリーズは、シュマイサー独特の表現として高い評価をうけています。
この章では「日記」の中から、貝や植物など彼の身近にあって、繰り返し描かれたものに関わる作品を取上げ、日常において記録し続けた変化に目を向けます。


「日記と貝殻」 1978年 個人

IV. 連作―変化を追う / Change and Metamorphoses

「変化」の主題と版画技法の特質を意識的に結びつけ、表現の可能性を探った作品が、その名も『へん/ Zustände / Changes』と題された3組の連作です。
「芸術とは自分の思考を展開させていくことであり、思い通りにそれを表現できる技術を身につけなくてはいけない」とシュマイサーは言います。多彩かつ高度な手法で、自らのイメージを具現化してみせた代表作『変化』シリーズ3組を初めて一堂に並べる、見応えある展示です。


『変化Ⅱ』 1984年 町田市立国際版画美術館蔵

V. 変化を創る / Creatiing Change

ドイツの正統に連なる版画制作を行うと評されることが多かったシュマイサー。しかし実際には、優れた技術を持つ者だけに許される自由奔放な制作を試みていました。とりわけ1990年代半ば以降は、その傾向を明確に示す作品を発表していきます。
小さな原版数枚を画面に配置する手法で、旅の印象を多面的にとらえた『冬の旅』シリーズ、版画にドローイングや手彩色を加えることで、刻々と変化する風景をとらえた『イルパラ海岸のかけら』連作など、ひとつとして同じ仕上がりのない “unique states” の作品群。南極の氷山が崩壊していく段階を、一枚の版の複数のステートで追った『Big Changes』連作は、版の展開に注目した手法の集大成といえます。
変化を追求してきたシュマイサーが至った、自分自身の手で変化を創り出そうとする挑戦をたどります。


『イルパラ海岸で拾ったかけら』より 2011年 個人蔵



『Big Changes』 2002年 個人蔵

展覧会情報

会期 2018年9月15日(土)~11月18日(日)
休館日 月曜休館、ただし9月17日(月)、24日(月)、10月8日は開館し、9月18日(火)、25日(火)、10月9日(火)休館
開館時間 平日10:00~17:00(入場は16:30まで)
土日祝10:00~17:30(入場は17:00まで)
観覧料 一般 800(600)円
大・高生、65歳以上 400(300)円
中学生以下は無料
※9月15日(展覧会初日)と11月3日(文化の日)は入場無料です。
※( )内は20名以上の団体料金。
※身体障がい者手帳、愛の手帳(療育手帳)または精神障がい者保健福祉手帳をお持ちの方と付き添いの方1名は半額です。
会場 町田市立国際版画美術館 企画展示室1、2
主催 町田市立国際版画美術館、読売新聞社、
美術館連絡協議会
助成 オーストラリア政府、豪日交流基金、
オーストラリアnowスポンサー
協力 日本航空、国立極地研究所
協賛 ライオン、大日本印刷、損保ジャパン日本興亜、
日本テレビ放送網
巡回先 奈良県立美術館
2019年4月13日(土)~6月2日(日)(予定)

ヨルク・シュマイサー展 プレスリリース PDF[1,467KB]
ヨルク・シュマイサー展 ちらし PDF[1,668KB]

関連イベント

※詳細や追加情報は随時更新いたします。

講演会「シュマイサーと日本」

日時:10月20日(土) 14:00~15:30
場所:1階講堂
講師:黒崎彰氏(版画家)
定員:先着120名(申込不要)
※参加無料。ただし、当日有効の観覧券が必要です。

特別ギャラリートーク 
「シュマイサーが訪ねた地」


作品に描かれた地を知る方々に、展示作品を前にお話いただきます。 
9月23日(日) 「南極」 橋田 元氏(国立極地研究所准教授)
9月29日(土) 「インド・ラダック」 山本高樹氏(写真家) 
11月4日(日) 「オーストラリア・アーネムランド」 
         窪田幸子氏(神戸大学教授)

「シュマイサーの技法」

11月11日(日) 小野修平氏(版画家)

※各回14時から40分程度。
※当日有効の観覧券をご用意の上、企画展示室1入口へお集まりください。

学芸員によるギャラリートーク

日時:10月14日(日)、10月27日(土)
※各回14時から40分程度。
※当日有効の観覧券をご用意の上、企画展示室1入口へお集まりください。

版画工房見学「もっと近くで見てみたい!銅版画が生まれるところ」

日時:11月3日(土)11時~12時30分、14時~16時 
場所:1階版画工房
対象:中学生以上
工房内に入って制作の様子を間近にご覧いただけます。
※直接版画工房にご入場ください。
※時間内随時見学可能 ※入場無料

プロムナード・コンサート 「偉大なる作曲家と巡る版画の世界」 高橋里奈(ピアノ)

日時:11月17日(土) 13:00~、15:00~ 各回30分程度
場所:1階エントランスホール
※お席の用意はございません。 
※参加無料。申込不要。直接会場へおこしください。

美術館で語り合おう! トークフリーデー

会期中の水曜日・土曜日
鑑賞のための静けさよりも作品をめぐる会話を楽しんでいただこうという試みです。
小さいお子さま連れの方も気兼ねせずにぜひご入場ください。

同時開催

ミニ企画展 ~まちだゆかりの作家~赤瀬川原平・岡崎和郎・中里斉

9月5日(水)~12月24日(月・祝) 常設展示室 入場無料

第20回「ゆうゆう版画美術館まつり」 10月6日(土)・7日(日)

会期中に開催される「ゆうゆう版画美術館まつり」では、中林忠良氏による友の会20周年記念講演会が行われます。

友の会20周年記念講演会 「一台の木製印刷機をめぐって」 

日時:10月7日(日) 14:00~15:30
場所:1階講堂
講師:中林忠良氏(東京藝術大学名誉教授・版画家)
定員:先着100名(申込不要)
※友の会会員以外の方もご参加いただけます。
※参加無料

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休館日
開館日
イベント

平日:午前10時〜午後5時
(入場は4時30分まで)
土・日・祝日:午前10時〜午後5時30分(入場は5時まで)

  • 小学生、中学生のみなさまへ

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