西洋古版画にみる「複製」と「創作」
展覧会概要
西洋古版画の巨匠であるアルブレヒト・デューラーとレンブラント・ファン・レインは、自ら絵を構想し、自ら版を作り、自ら作品を刊行した画家-版画家でした。一方、本展出品の16-17世紀の西洋古版画は主に画家と版画家、そして版元らによって共同制作されたもの。既存の作品や画家の素描、版元の意向が反映された下絵などをもとに、版画家が版を刻んでいるのです。
マルコ・デンテ(版刻)他 「嬰児虐殺」
16世紀初め エングレーヴィング
現在、前者の作品は「創作版画」、後者は「複製版画」と呼ばれています。それぞれを美術家による「美術品」と、職人による「複製品」と見なしていると言い換えることもできるでしょう。ここには版画を単なる印刷の「技術」としてではなく、絵画や彫刻と同じ「美術」として見なすことで生じる優劣が反映されているといえます。
ピーテル・ブリューゲル(父)(原画)他
『軍艦』より「二隻のガレー船と軍艦」
1562年頃 エングレーヴィング
ただし、このような見方は19世紀頃に成立したものです。実際の作品や歴史的・社会的背景に目を向けると、今日的な「複製」と「創作」の考え方では語りきることのできない世界が広がっています。また原画や下絵を版におこすときの版画家の解釈によって、もとの絵とは違った版画独自の魅力をたたえた作品も少なくありません。本展をつうじて、奥深い西洋古版画の世界の一端をご堪能いただければ幸いです。
展覧会情報
会期 | 2018年4月11日(水)~6月17日(日) |
---|---|
観覧料 | 無料 |
▶西洋古版画にみる「複製」と「創作」 リーフレット PDF[354KB]