日本の版画1200年―受けとめ、交わり、生まれ出る

企画展

版画が織り成した文化交流の物語とは―

「日本らしさ」とは、何を指すのでしょうか。
たとえば日本が世界に誇る浮世絵は、実は中国や西洋の表現手法を取り入れつつ百花繚乱の世界を開かせました。歴史を紐解くと、「日本らしさ」の奥には多様な文化的背景をもつ作品や人との交わりを見つけることができるでしょう。
本展では、日本現存最古の印刷物である無垢浄光大陀羅尼経(むくじょうこうだいだらにきょう)から、仏教版画、絵手本や画譜、浮世絵、創作版画、新版画、戦後版画、現代版画へと連なる約240点を当館収蔵品から厳選して紹介。特に他の東アジアの国々とのつながりにも注目し、文化交流の視点で日本の版画1200年の歴史を辿ります。
私たちが「伝統」、そして「芸術」として考える版画はどのように生まれ、どこへ向かうのか。この春、「日本の版画」1200年の旅に出かけませんか。

展覧会情報

展覧会名 日本の版画1200年―受けとめ、交わり、生まれ出る
会期 2025年3月20日(木・祝)~6月15日(日)
*5月8日(木)から後期展示
休館日 月曜日 *ただし5月5日(月・祝)、6日(火・振替休日)は開館し、7日(水)は休館。
会場 企画展示室1、2
観覧料 一般800(600)円、大・高生400(300)円、中学生以下は無料
*( )は20名以上の団体料金
*身体障がい者手帳、愛の手帳(療育手帳)または精神障がい者
 保健福祉手帳をご提示の方と付き添いの方1名は半額
無料日 3/20(展覧会初日)と、4/19(開館記念日)は入場無料
シルバーデー 毎月第4水曜日はシルバーデー(3/26、4/23、5/28は65歳以上の方無料)

展示構成

1 | 版と祈り―日本版画のあけぼの

奈良時代の天平宝字8年(764)、称徳天皇は諸寺に《百万塔》を安置します。その内部に納められたのが、現存日本最古の印刷物とされる《無垢浄光大陀羅尼経》です。平安時代になると、日本では木版画の制作が活発になり、主として仏像内部に納められるために印仏や摺仏が制作されました。南北朝時代に至ると、仏教版画は大型化し、版で摺られた上に手彩色で荘厳され、礼拝の対象として堂宇に祀られるようになります。

《無垢浄光大陀羅尼経(自心印陀羅尼経)》 奈良時代(767-769頃)[前期]


《十二天像(与田寺版)のうち梵天》 室町時代 木版手彩色[後期]

2 | 出版文化の隆盛―拡散するイメージとその受容

16世紀から、イエズス会士はキリスト教布教のために中国へ渡り、西洋の文物を伝えます。《康熙帝御製耕織図》では西洋画から学んだ透視図法が用いられる一方、《蘇州景 新造萬年橋》には西洋画を消化した独自の遠近表現が見られます。同じ頃、に大陸では画譜出版文化が隆盛を迎えていました。日本では舶来の画譜を基にした独自の版本が次々に制作されました。本章では狩野派や南蘋派の画譜も紹介します。

《円窓の二美人》清時代(18世紀頃) 木版手彩色[前期]


王概(編)『芥子園画伝』(和刻) 宝暦3年(1753) 木版多色摺

3 | 変わり続ける浮世絵―舶来文化の吸収と再創造

舶来文化の影響を受け、日本の版画は浮世絵の世界で千変万化の様相を呈します。19世紀、葛飾北斎や歌川広重は浮絵の手法を発展させ、浮世絵風景画という新ジャンルを確立しますが、その淵源には蘇州版画や西洋画があるといわれています。さらに明治期の小林清親による「光線画」は、西洋画をヒントに夕日や灯火といった繊細な光の微妙なうつろいを描き、変わりゆく新都会東京に生きる人々を郷愁へと誘いました。

葛飾北斎「冨嶽三十六景 遠江山中」天保2年(1831)頃 横大判錦絵[後期]


歌川広重「東海道五拾三次之内 箱根 湖水図」天保4-5年(1833-34) 横大判錦絵[前期]

4 | 創作版画と新版画―両洋の眼・浮世絵の超克

明治30年代、「自画・自刻・自摺」を理想としてかかげた「創作版画」が登場します。本章で取り上げる戸張孤雁や織田一磨などは、創作版画家の中でも特に浮世絵の伝統を重んじて制作をおこないました。この一方、大正期初めに浮世絵版画の出版体制を継承する「新版画」が渡邊庄三郎によって創始されます。両者は西洋美術に刺激を受け、浮世絵版画を超克する近代日本版画となるのでした。

小早川清《近代時世粧 瞳》1930年 木版


川瀬巴水《霧之朝(四谷見附)》1932年 木版

5 | 版画誌がつなぐネットワーク―日本と中国の「創作版画」

創作版画運動が盛り上がると、1920年代から日本各地で版画家のグループが結成され、版画誌が隆盛します。日本留学中にこの動きを知った魯迅は、中国の創作版画ともいえる「新興版画」を提唱しました。版画家・編集者の料治熊太が主宰した創作版画誌『白と黒』や『版藝術』には、中国・広州の若者が1934年に結成した「現代創作版画研究会(現代版画会)」に作品を寄せ、日中版画交流の舞台になりました。しかし1937年に日中が本格的な戦争状態に突入すると、中国の作家は抗日や政治的主題を描く木刻運動に身を投じ、両国の版画交流は途絶えざるをえませんでした。

編集:料治熊太『版藝術』〈勝平得之版画集 全国郷土玩具集の[九] 秋田郷土玩具集〉1935年9月 木版


編集:料治熊太『版藝術』〈現代創作版画研究会(中華民国版画集) 南中国郷土玩具集〉1936年1月 木版

6| 占領下における新しい版画の胎動―中央と地方、モダニズムとリアリズムの往還

1945年の敗戦後、海外との交流をきっかけに新しい美術を生み出す動きが胎動し始めます。本章では恩地孝四郎を慕う版画家が集った「一木会」と、山形県南村山郡山元村にあった山元中学校(通称「山びこ学校」)に注目します。前者はアメリカ進駐軍関係者との交流を経て「実物版」の抽象作品を育み、後者は中国木刻が紹介されたことをきっかけに、生活綴り方を版画に応用させました。2つの動きは戦後の教育版画運動のなかで合流し、1960年代から小中学校教育で版画が取り入れられることにつながっていきます。

恩地孝四郎《リリックNo.9 はるかな希い》1950年 木版


山形県南村山郡山元村山元中学校『炭焼きものがたり』1951年 木版

7 | 「国際版画展」の季節―「版画の国」を広め育てる

戦後、冷戦期は各国が文化政策の一環として国際展を開催し、日本も国際文化交流に力をいれました。なかでも棟方志功が1956年ヴェネツィアビエンナーレで受賞したことは、「版画の国」としての日本の存在を内外に示しました。さらに欧米を中心に各国で国際版画展が創設されると、1957年には東京国際版画ビエンナーレが始まりました。国際的に活躍する土台が整ったことで、日本の版画家は冷戦下の政治体制をこえ様々な国で受賞を重ねました。1970年代から美術大学に版画コースが設立されると、国際版画展受賞者が教鞭を執っていきます。小学校から大学まで幅広い場で版画を学ぶ環境が整ったことが、日本が版画大国となる礎を築きました。

棟方志功《二菩薩釈迦十大弟子 富樓那の柵》1939年 木版[前期]


靉嘔《レインボー北斎 ポジションA》1970年 スクリーンプリント

関連イベント

★印のイベントは、町田市イベント申込システム「イベシス」HPあるいはイベントダイヤルでの事前申込が必要です。申込期間等、詳細については後日更新しますので、当館HPをご覧ください。

★1. 記念講演会

5月18日(日) 14:00~15:30
講師:山口晃氏(画家)
会場:講堂
定員:120名(申込順)
*本展観覧券(半券可)をご用意ください
作品制作にとどまらず、著書『ヘンな日本美術史』では独自の観点から日本美術史を論じてきた山口晃氏。実作者の立場からみた日本の版画の魅力を語っていただきます。

★2. 0歳からの版画美術館!親子で鑑賞&版画あそび

4月16日(水) 対象:0歳~未就学児童とその保護者
5月17日(土) 対象:0歳~小学2年生とその保護者 
10:15~11:45(各回90分程度) 
講師:冨田めぐみ氏(NPO法人赤ちゃんからのアートフレンドシップ協会代表理事)
会場:講堂、企画展示室
定員:各回10組(申込順)
展示室での鑑賞と、お家で応用できる版画あそびが体験できます。
*保護者の方は当日有効観覧券をご用意ください(お子様は参加無料)
*対象学年を超えるお子さんの参加については申込時にご相談ください

★3. 子ども講座―みてみてつくろう―

3月29日(土)13時30分~16時
対象:小学3~6年生
講師:杉浦幸子氏(武蔵野美術大学芸術文化学科教授)
会場:講堂、企画展示室
定員:16名(抽選)
受講料:1,000円(材料費込)
展覧会を鑑賞し、出品作品にちなんだテーマで小さな作品を制作します。

4. 復刻浮世絵版木摺り体験2025

5月24日(土) ①13:30~ ②14:30~
対象:どなたでも(未就学児は要保護者同伴) 
会場:アトリエ
定員:各回10名(当日受付・先着順)
参加費:1人100円

5. 担当学芸員によるギャラリートーク

①1章~3章 仏教版画、浮世絵を中心に 4月5日(土)、5月17日(土) 
②3章~5章 新版画、創作版画を中心に 3月23日(日)
③5章~7章 創作版画、戦後・現代版画を中心に 3月30日(日)、5月3日(土)
担当|①宮﨑黎 ②滝沢恭司 ③町村悠香
 各日14:00から30分程度
会場|企画展示室1
*本展当日有効観覧券をご用意ください。

6.プロムナードコンサート

6月14日(土) 第1部:13:00~ 第2部:15:00~(各回30分程度)
演奏:第1部 玉川大学芸術学部音楽学科
第2部 桜美林大学芸術文化学群音楽専修
会場:エントランスホール
*鑑賞無料

割引

※割引の併用はできません。

リピーター割引 200円引
観覧券売場で本展の半券をご提示ください。
シェアサイクル割引 100円引
観覧券売場でシェアサイクルのアプリの予約・利用履歴画面をご提示ください。
※シェアサイクルについては▶【コチラ】
タクシー割引 100円引
観覧券売場で当日のタクシーのレシートをご提示ください。
※レシート一枚につき、お一人様のみの割引です。
パスポート割引 一律:100円引
観覧券売場で日本国以外のパスポートの表紙をご提示ください。
ウェブクーポン割引 100円引
観覧券売場で▶【クーポン画面】を保存もしくは印刷し、観覧券売場でご提示ください。

チラシ、プレスリリース

▶チラシ (PDF) (表)(裏)
▶オンラインプレスリリース:準備中

同時開催

特集展示「ふぞろいの版画たち―西洋版画のシリーズとステート」
3月14日(金)~6月15日(日) 
常設展示室 入場無料

  • 芹が谷だより
  • オフィシャルX
  • 版画のつくりかた
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休館日
開館日
イベント

平日:午前10時〜午後5時
(入場は4時30分まで)
土・日・祝日:午前10時〜午後5時30分(入場は5時まで)

  • 小学生、中学生のみなさまへ

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